東京地方裁判所 昭和30年(ワ)9654号 判決
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〔事実と判断〕本件要役地たる東京都千代田区六番町七番地の六宅地一二八坪六合五勺及び承役地たる同町七番地の五宅地三二六坪八合七勺は、いずれももと魚住清適の所有であつたが、右要役地は昭和二七年四月一八日富成宮吉に、昭和二九年三月一二日富成から原告に、それぞれ売渡され、承役地は昭和九年七月二五日大河内輝義に、昭和一二年二月八日大河内から被告に、それぞれ売渡された。また、魚住は、本件要役地を富成に売渡す前に、自己が居住していた七番地の六より同番地の七宅地一四六坪を分筆して杉浦仙之助に売渡したが、自宅より公路に通ずるため、当時大河内所有の七番地の五を通路として通行していた。原告は、第一次的に、魚住と被告との間に、被告が大河内から本件承役地を取得した後、その西側隣地に沿つて北方公路に接続する長さ一、六間巾二間三尺につき通行地役権設定契約ができたこと、またこれが認められないとしても魚住は右部分の通行地役権を時効によつて取得したことを原因として、通行地役権の存在確認、その設定登記手続等を求め、次に予備的に、民法二一〇条による囲繞地通行権あることを主張して、前記部分を通行させるべきことを求め、なお本件七番地の六の宅地は被告が昭和二八年八月通路を遮断するまでは通路を有する土地で袋地ではなかつたから、民法二一三条を適用すべき場合でないが、仮りに本件の場合同条によるべきものとしても、同条は一筆の土地を数回にわたり分割譲渡した場合最後に分割譲渡された土地のみが袋地所有者の通行権を認容しなければならぬと解釈すべきではない、と主張した。
判決は、原告の予備的請求について、まず民法二一〇条は土地所有者の処分行為によつて袋地を生じた場合には適用なしとして、この点の主張を排斥した後、民法二一三条の適用の点について、次のように判示して原告の請求を斥けた。曰く、
「次に原告は民法第二百十三条によつても被告の所有地について通行権を有すると主張するが、同条第一項は共有土地の分割の場合の規定であるから本件の場合には該当しない。次に民法第二百十三条第二項は所有者の一部譲渡により袋地を生じた場合の規定で、分筆の上譲渡した場合は厳密には一部譲渡と謂えないが、単に分筆しただけでそれらの土地が依然同一人の所有に属している間は相隣関係の問題を生ずる余地なく、譲渡により他人の所有地を通らねば公路に達しられない袋地を生じた場合に相隣関係として所有権を制限調節する要がおきるのであるから、『袋地』を右のように理解すべきである。従つて分筆の上譲渡した場合も一筆の一部を譲渡の上分筆した場合もいづれの場合にもこれにより始めて他人の所有地を通行しなければ公路に達しられない袋地を生じた場合にのみ本条項が適用されるべきである。それ故相当の期間をおいて数回に亘り分筆譲渡された場合、たとえ元は一筆の土地の一部であつた土地でも、その土地の譲渡によつては未だ『袋地』を生ずるに至らなかつたときは、その後他の土地のなかで譲渡(一部譲渡、分筆譲渡、又は既に分筆済の数筆の内の何筆かの譲渡)が行われたため『袋地』を生じた場合、始めに譲渡された土地は通行権の対象とならないものと解するから、本件においても七番地の五の宅地は七番地の六の宅地のための通行権の対象とならないものと謂うべく、従つてこの点に関する原告の主張は採用できない。」